外力に対峙する構造の性能と計画(SEスタジオ)

建築構造工学スタジオでは、半期で2つの課題に取り組みます。最近の例は次の通りです。
- 課題1:構造物の仕組みを伝える企画の立案
- 課題2:過酷な条件下の架構に対する工学的検証
課題1:構造物の仕組みを伝える企画の立案
オープンキャンパスや大学祭などで展示・公開されることを想定して、構造物の仕組みや挙動を伝えることができる企画(模型設計や実験計画など)を提案します。伝えたい内容(構造形式や部材、挙動)を選定し、伝えたい相手(学生、一般向けなど)に合わせて実際の構造物や挙動をモデル化して、特徴がわかりやすく伝わるように計画します。
【成果例①】構造物の安定や力の流れに着目した模型(高校生対象)
作用している力が可視化できる部材要素や接合要素を製作
各要素を組立てて、組立てた模型に力をかけることが可能
→ 構造物の安定や力の流れの理解を促す

【成果例②】耐震壁の配置と揺れ方に着目した模型(高校生対象)
壁を自由に配置可能に、また、壁、柱の端部を磁石で床に接合することで容易に再組立可能となるように模型を製作
ビー玉を敷き詰めた土台に模型を乗せて、模型を揺らすことが可能
→ 壁配置による揺れ方を確認できる

課題2:過酷な条件下の架構に対する工学的検証
フィクションの世界で描かれた構造体に関わる現象・過酷な条件下の挙動を工学的に検証します。
実世界で本当に起こり得るのか?起きるとしたらどのような条件が想定されるか?
といったことを,解析技術,構造性能評価手法などを活用して検証します。
【成果例】
蜘蛛の糸を武器として操るヒーローが主人公の映画で、悪者により破壊される塔状構造物(塔)を、主人公の得意技で食い止めようとするシーン(左図)を題材にした例は次の通りです。
蜘蛛の糸を包帯のように巻き付け、塔の崩壊をいったん食い止める場面を検証し、現実に炭素繊維巻立て補強工法という古い建物の柱を補強する技術があることを調べ、その技術との類似性からこのシーンの妥当性を示しました。
続くシーンでさらに大きな力を受けて塔は倒壊に至ります。その過程で主人公が、少し離れたところに立つ健全な二つの建物と塔を強靭な蜘蛛の糸で結び付けて一時的に支える様子について、建物配置や距離を考慮して分析し、塔を合理的に支えられること示しました。
なお、地図アプリを使い、この街は実在していること、さらに一時的に支えるための建物のうち一方が実際には存在しないことを見つけました。倒壊しそうな塔を合理的に支える演出のために架空の建物を描いたのではないか、と推測しました。
